不二WPCのDLCの膜種・硬さ・特性
膜種 |
a-C:H |
a-C:H(Si) |
ta-C |
硬度(Gpa)*1 |
20-25 |
18-20 |
60-70 |
耐熱温度(℃)*2 |
300-350 |
450-500 |
550 |
摩擦係数 |
約0.1 |
約0.1 |
約0.1 |
*1 押し込み式硬度計(Hysitron)により測定
*2 大気中、1時間保持による硬度変化で評価
異なる表面状態にDLC被覆を施した試材の表面観察結果と測定データ
DLC膜は摩擦係数が非常に低い材料ですが,摩擦係数は表面の形状にも影響されます。異なる表面形状の試料にDLC膜を被覆し摩擦係数を測定した例を示します。試料は鏡面に研磨したもの,切削痕のあるもの,WPC処理®により凹凸を作ったもの(凹凸の大小2種類)で比較しました。
データでわかるように,WPC処理®により凹凸を作ることにより摩擦係数は小さくなっています。また,鏡面にした試料では摩擦係数が安定しません。一般的には,鏡面の場合の方が摩擦係数が低くなりそうですが,実際には,異なる結果になっています。
この現象は,次のように理解できます。材料同士の接触では,荷重が同じであれば材料の変形により接触面積は同じになります。鏡面の場合は,一点で広範囲で接触していますが,凹凸があると小さい接触面積で多くの点で接触します。そのため,接触部が動く場合,スティックスリップ現象(ビビリの様な現象)や吸盤による吸い付きの様な現象が起きやすく,摩擦係数が高くなったり,不安定となります。
データでは,比較的大きな凹凸が摩擦係数が小さい結果が得られていますが,実際には,使われている部品にかかる荷重や滑り速度などの条件により最適な形状を選択する必要があると考えられます。
DLCコーティング後の断面SEM観察とEPMA 分析
炭素との親和性が高く質量の重いタングステン(W)微粒子を用いてアルミ基材(Al)にWPC処理®を行った後にDLCを成膜したときのWPC改質断面の状況。
EPMA 分析像が示すように、表層にタングステン(W)粒子が微細に分散した約10μmの層とその直下に約40 μmの機械的に硬化された層の2層からなる硬化層が形成されています。
これにより、DLC膜のアルミ(Al)基材に対する密着性と耐摩耗性を高めています。
限界重荷試験結果
「A5052 + WPC + DLC」 の断面観察
「A5052 + WPC + DLC」 の断面観察