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DLCコーティングの工程

1. 検品・洗浄

下地の改質、徹底的なクリーニングを行います!

残留物はDLCプロセスの際にアーク(火花)の発生、ムラなどの原因になるため、表面の酸化層や油分を徹底的に除去しておく必要があります。このため新品が望ましいことは言うまでもありませんが、そうでない場合でも損傷の有無や汚れの状態を入念に確認し、そのコンディションに対応したクリーニング作業を行います。また多くの場合、WPCやラップ処理を施してからDLCコーティングします。

 

加熱型真空脱ガス炉
MAX約300℃(DLCコーティングプロセスより高温)にパーツを加熱。炉内の圧力を下げて真空引きすることで、染み込んだ油分やゴミを油穴の奥から除去します。これにより使用したパーツでもDLCコーティングが可能になりました。
超音波洗浄
メガネ店で見かける洗浄機と原理は同じで、シンク中の洗浄液を38kHzの超音波で洗浄します。超音波の振動は局部的にキャビテーションによる衝撃波を与え、汚れを落とします。小さいパーツには小型洗浄機も使用します。
2槽式半自動洗浄機
1槽部は洗浄液の中に部品を入れ、内部を真空引きするとともに超音波洗浄。素材内部まで洗浄成分が浸透し、油分や不純物を効率よく除去できます。2 槽部では、蒸留して純度を上げて加熱した洗浄液でシャワーリングして外をすすぎ洗浄した後、槽内で乾燥して仕上げます。
研磨
必要に応じて鏡面仕上げ用マシンで磨きます。

2. マスキング

DLC膜の不要な部分は丁寧にマスキングしておきます!

パーツによってはDLCコーティングが不要な部位があります。そうした場合は不要部分をマスキングしてから、DLCコーティング工程に入ります。板金塗装やボディコーティングの際に施すマスキングと基本的に同じ目的ですが、高温でも耐えられるように厚手のアルミシートで行います。

オートバイのフロントフォークへのDLCコーティング。
不要な部分にはアルミシートでマスキング処理を施します。

3. DLCコーティング

チャンバー内の大気を完全に抜き取ってから、アセチレンガスを注入

パーツ類を装置の中に吊してスタンバイしたら、いわゆるカマ入れの本番に入ります。まず真空ポンプで空気を抜き取って高真空状態にして、アルゴンガスを注入。ガス・クリーンアップを行って表面をきれいにします。さらに中間膜形成のためにTMS(テトラ・メチル・シラン)というシリコンガスを充填。最後にアセチレンガスを注入して高周波の高電圧を加えると、プラズマが発生してアモルファス膜がパーツ表面に生成されます。

各種ガスを注入して、高電圧を印加。成膜と冷却を繰り返しながら膜を重ねていきます。

プラスイオンとなった炭素はマイナスを帯びたパーツの表面に引き寄せられて3次元に結合しアモルファス膜を生成。
これがDLCコーティングとなります。

 

DLC成膜装置(外観)
高真空状態に耐えられるよう、非常に頑丈に作られたDLC成膜装置。

高度250kmの大気と同じ状態になります。

DLC成膜装置(装置内)
さまざまなパーツを同時に処理するために各種の治具を活用し、

これらを回転(自転)させることで均一な成膜が可能になります。

デリケートなDLCコーティングプロセスはクリーンルームで行います

検品・洗浄の段階から、DLCコーティングの作業環境には最大限のクリーンさが要求されるため、DLC専用クリーンルームを新設しました。
さらにDLC装置は、クリーンルーム内でも透明なカーテンで仕切られて万全を期しています。

糸くずの出ないウエスを使用

糸くずの出ないウエスや作業用グローブを使用します。

クリーンルーム用クリーナー

作業環境を悪化させないようにクリーンルーム専用の掃除機を使います。

クリーンルーム用内履き

室内はもちろん土足厳禁です。

4. 仕上がり

約6時間かけて成膜します

 

パーツを装置内に吊した後も、細心の注意を必要とする作業が続きます。
約6時間という時間をかけ、成膜と冷却を繰り返し、DLCコーティングします。

なお装置内の様子は、耐熱ガラスの小窓を通して見ることも可能です。